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DIAMOND SWING#2 台本

DIMOND SWING #2 

 

(前回のあらすじ)

高校生活2年目の夏、ピータは友人のパーシーの家に遊びに行くことになった。自分の父親は世界一の金持ちだと言うパーシー。どうやら彼の父親はリッツカールトンホテルよりもっと大きいダイヤモンドを持っているらしいのだが...

(本編)
モンタナ州の夕日は二つの山の間に広がる巨大な傷のように赤く空一面を染めていた。
そんな空の下の遥か彼方にはちっぽけなフィッシュ村が見捨てられたようにうずくまっている。フィッシュ村には12人の人間が住んでいると言われていた。
その12人の村人は七時に停車するシカゴ発大陸横断急行を見ようと亡霊のように駅の小屋に集まる。急行から一人か二人の乗客が降りて夕日に向かって去ってい行くのを、村人たちはただ眺める。ただ眺めているだけである。このフィッシュ村の人たちの間ではこれが一種の儀式のようになっていた。

7時2分にパーシーとピータは列車を降り、驚きと恐怖でおののいているフィッシュ村の12人の目の前を急ぎ足ですり抜けるとどこからともなく現れた馬車に乗り込み走り去った。
30分後、黄昏が深まり闇となるころ、無言で馬車を走らせる運転手は前方の薄暗がりにぼうっと現れた物体に声をかけた。その声に応じて闇のなかで光輪がパッと光り、こちらを睨みつけた。
もっと近づいてみると、ピータがこれまでに見たことないほど巨大で豪華な自動車のテールライトであることが分かった。車体はニッケルより贅沢で、銀より明るく光る金属でできていた。車輪の中央には金と緑の玉虫色に光る幾何学模様がちりばめられている。ピータはそれがガラスなのか宝石なのか想像する元気も出なかった。

パ「乗れよ」

P「今行く!」(車に気を取られていたP太がパーシーの声でハッと気が付く)
(乗る)

パ「馬車なんかでこんなところまで連れてきてごめんよ。でもこの車が列車に乗ってる人やフィッシュ村のろくでもない奴らに見られるのはまずいんだ。」

P「それにしても、すごい車じゃないか...!」

この叫びは車内の装飾を見て発せられたものだった。車内は金色の布地に宝石と刺繍を織り交ぜた豪華な絹のつづれ織りが貼りめぐされていた。アームチェアは何か けば立った布地のようなもので覆われていたが、どうやら無数の色彩の鳥の羽の先端を折り合わせたものらしかった。

P「なんて車なんだ...!」

パ「これかい?こんなのステーションワゴンの代わりに使ってる古いガラクタさw
もう30分ぐらいもすれば着くだろう。
言っておいた方がいいと思うけど、君が今までに見たこともないようなところだよ。」

もしこの車がこれからピータが見る者の前兆だとしたら確かにびっくりするところだろうとピータは思った。
車は今や2つの山のはざまに差し掛かり、やがてその内部へと入っていった。

(めっちゃでこぼこ道で揺れる)

パ「ここからの道は岩だらけだ。普通の車なら30分もすればガタガタになっちゃうね。実際道を知らなければ、戦車じゃなきゃ通れないよ。たまに結構揺れるから気を付けて」

パ「つかまって!!」

(私道に入る)

パ「最大の難関は無事突破したよ。」

P「さっき何回か事故らなかった??」

パ「ここからは8キロしかないし、うちの私道でここの土地は家のモノなんだ。ここはもう合衆国じゃないんだって父さんは言ってたよ。」

P「じゃあカナダなの?」

パ「いや、そうじゃない。モンタナ州のロッキー山脈の真ん中さ。ただね、ただ一か所、国中でまだ測量されたことのない8キロ4方の中にいるってわけなんだ」

P「え、なんで?測量するのを忘れたの?」

パ「いや、そうじゃないんだ。3回測量しようとしたのさ。最初の時はおじいちゃんが州の測量部の人を全部買収しちゃったんだ。2回目は合衆国の公式地図をちょっといじったんだよ。そのおかげで15年間は持った。3度目が一番大変だったんだ。父さんは奴らのコンパスを人工的に作った強い磁場の上に置かせて、川の流れを変え、対岸に村のように見えるものを建てさせたのさ。それで奴らがそれを見て谷をさかのぼったところに町があるように思わせるようにしたわけさ。
それでも父さんが恐れているものが1つだけあるんだ。僕らを発見できるものが世界に1つだけある。」

P「それは何だい?」

パ「飛行機さ。
うちには高射砲が6個あってね、それで今まで何とかやってきたんだけど、何人か死者は出たし、捕虜にしたのもたくさんいる。もちろん、父さんや僕はそんなこと気にしてるわけじゃないんだ。でも母さんや妹はすっかり動転しちゃっててね。それにいつ、こちらの手におえない時がやってくるか分かったもんじゃない」

パ「ほら着いたよ」

星明りの中にこの世ならぬ美しさをたたえた城が湖のほとりに浮かび上がり、裏手の山の中腹まで輝かんばかりの大理石をそびえたたせていた。数多くの塔、勾配を付けた壁の細かい装飾、黄金に輝く数えきれないほどの窓、交差した屋根が星明りを受けて青い影を帯びている柔らかさ、そういった全てのものがピータの胸を音楽の和音のように震わせた。

(ドアが開く)

パ「母さん!
こちら僕の友達のハデスから来たピータ・ハパーです」

P「お世話になります。ピータハパーです」

P「ここから先は記憶が曖昧だ。
後になって考えると最初の夜は、目がくらむような一夜だった。色鮮やかな色彩、一瞬のうちに五感に刻まれた印象、甘いささやきにも似た音楽、様々なものの美しさが溢れかえっていた。
立ったままクリスタルのグラスでリキュールを味わう白髪の男がいた。髪にサファイアを飾った花のような少女がいた。隅から隅まで純金で貼りめぐされた部屋があった。どの部屋も天井や床、いたるところにダイヤモンドがびっしりと埋め尽くされており、その無数のダイヤモンドは部屋のランプに照らされて人間の夢も欲望も超越した例えようもない純白の輝きで目をくらませてきた。
それからは霧の中のことのように覚えているのだが気が付くと晩餐の席についていた。」(←全て心の声)

P「この皿やグラスは全てダイヤモンドか...!?この細かい模様はエメラルドみたいだ...」(心の声)

使用人「こちら西部の農場で作ったポートワインでございます」

P「あぁ一杯飲んだだけで甘い心地よさと眠気に飲み込まれそうだ... パーシーのお父さんが何か話しかけている...」(どんよりした心の声)

P「はい、ハデスでは寒さに困ることはありません...」(その場でバタッとピータは眠りに落ちる)


(数時間後)

P「うぅ...」

パ「あ、起きたね!君は夕食の最中に眠ってしまったんだよ。僕も危うく眠り込むところだった。あの1年間の学校の後じゃあぐったりしちゃうよなぁ。君が眠ってる間に使用人達が服を脱がせて風呂に入れたんだ。」

P「はぁ...これはベッドなのか...雲なのか...?
あぁパーシー、パーシー、君が行ってしまう前にちょっと謝りたいことがあるんだ。」(眠たそうに)

パ「何だい?」

P「君がリッツカールトンホテルのように大きいダイヤモンドを持ってるって言ったとき、君を疑ってしまったことさ」

パ「君は信じないだろうと思ったよ。それはこの山のことなのさ」

P「山って言うと?」

パ「この城が建っている山のことさ。山としてはそんな大きい方じゃない。だけど表面の15mばかりの芝生や砂利を取り除けば、この山は全部ダイヤモンドでできているんだ。一個のダイヤモンドなんだよ。全然傷のない、4立方キロメートルのダイヤなんだ!...って おい、聞いてるのかい?おーい」

しかしピータTハパーは再びぐっすりと眠りに落ちてしまった。。。

(2話おわり)